戌年生まれの私が初めて犬を意識したのは、4才の頃でした。
毎晩、父が寝物語に「忠犬ハチ公」の話を一緒の布団の中で聞かせてくれたのです。
毎回同じ話なのに飽きもせず、話をして欲しいとせがんだことを覚えています。
「雨の日も風の日も飼い主の先生を迎えにトコトコトコトコ駅まで歩いていくハチなのでした。」
このトコトコという言葉の所に来ると、何ともハチが可哀そうでいつもうるうるしていました。それから10年以上経ち、どうしてもハチに会いたい私は、上野の博物館に展示されているハチの剥製を見に行った記憶もあります。
小学生にあがり、犬が飼いたくても親の許しがでない頃は、犬のぬいぐるみを紐で括り、外でお散歩の真似事をしていました。当然自分の前を歩いてくれるわけもなく、自分が紐を引っ張るしかなかったことが子供心に切ない思い出として残っています。
ぬいぐるみではなく、動物の犬を自分で飼えるようになってから半世紀、何頭もの犬を飼いました。ほとんどは拾った犬でした。そして当時は外での飼育でした。
初めて室内で飼育するようになったとき、それまでの外飼いと違って犬の息遣いが聞こえることにとても歓びを感じました。その歓びとともに感じた少しの危機感。少しはしつけというものをしないといけないのではないか。
私は見よう見まねでやってみようと本を何冊か購入しました。そこに書いてあったのは、甘噛みさせてはいけない、飛びつきをさせてはいけない、先にご飯を食べさせてはいけない、一緒に寝てはいけないなどなど。いけないづくしの約束事です。しつけるって大変だと感じました。一言でいうなら、人間がリーダーにならなければいけないということだったのです。
一度だけトレーナーに来てもらったことがあるものの、トレーナーの脇につき、何度も止まれ、おすわりを繰り返す我が家の犬の表情がとても悲しそうだったので止めてしまいました。
ところが、今回受けたセミナーでは「~してはいけない」の後に「?」がついていたのです。そのようにして飼い主をバカにするようになりましたか?「いいえ!」そんなことはありません。そもそも先祖であるオオカミは家族だったし、人間と犬という異種間でどちらかがリーダーになることはできないのです。
う~ん!これは大いに腑に落ちたことでした。
我が家では2匹目を迎えたときから、先住犬の室内マーキングが始まり困っていましたが、マーキングや吠えるなどの人間にとって困った行動もごく普通に犬らしい行動であるだけだと認識できたとき、「ごく当たり前のことなのに気づいていなかった。」と心の中で苦笑してしまいました。犬らしく生きさせると、問題行動はもはや問題行動ではないわけです。主従関係ではなく「共存」。なんて素敵な言葉なのでしょう。
レポートを書くために、レジュメを最初から読み返して気付いたことがありました。
それは、私が過去に学んでいたアドラーの心理学に似てるということでした。
子育てが楽になるようにと勉強会に行ったのです。やり方は簡単でした。
子供に話しかえるとき、語尾を替えるだけです。
「勉強しなさい」→「勉強が終わったら一緒におやつを食べようね。」
「お手伝いをしなさい。」→「お手伝いをしてくれると助かるな。」
「ピアノの練習をしなさい。」→「○○ちゃんの演奏を聴きたいな。」
このように語尾を替えるだけで子供の反応は全く違い、それを言われた子供がポカンを口を開けて不思議そうに私を見ていたことが思い出されました。そして結果はもちろんたやすく親の望む結果が得られたのです。
子供に問題があったとき、すべてを受け入れてだまって添い寝から始める。これも「よりそイズム」だなあと。・・・ということは「よりそイズム」の考え方は人間の子育てにも役に立つと確信に近いものを感じた次第です。
私は自我状態がNP型と出ました。否定的側面が過保護、過干渉とのことで、それには少し不思議な気がしました。「基本的には少し距離をおいて見守り、必要なときは全力で助ける。」
そんな関係、セミナーでの言葉だと離別感が好きで子育てをしてきたように思います。我が家の犬たちにもそうやって接したいと願っています。
私のそばにいてくれる犬たちにありがとう!それぞれの個性を尊重し、共存できる幸せに感謝したいと思います。では犬にとって私は良い共存相手なのだろうか。これには大きな声ではい!と言えないところがあります。もっと彼らが思っていることを知らなければいけないし、知りたいと思います。
間違った受け取り方をしているとしたら、人間よりはるかに短い犬生の子たちに申し訳ないことになってしまいます。
今まで、私はずっと仕事をし続けてきて、犬たちに随分我慢をさせていたと思います。朝、窓越しに私を見送る子達の姿を切なく見たこともありましたが、6月からは一緒に過ごせる時間がぐんと増します。色々な所に出かけよう!もっとしっかり手入れをしてあげよう!今から楽しみで仕方がありません。
6月からの時間を充実させる為にも、これからも「よりそイズム」を勉強していきたいと強く思った次第です。
<金子弥生さん>